セラミックは天然歯に装着する補綴物の一種で、優れた審美性を有しています。
また補綴物として代表的なものには他にも銀歯が挙げられますが、実は銀歯はセラミックとは違い、歯に“接着”させるものではありません。
今回は、セラミックが歯に“接着”することの凄さを中心に解説します。
銀歯を装着する仕組みについて
銀歯は、虫歯を削った後に使用される代表的な補綴物です。
詰め物という場合、こちらを指すケースが多いです。
また銀歯を装着する際は、歯を削った部分に銀歯を装着し、銀歯と天然歯の隙間をセメントで埋めて固定します。
しかし、こちらは接着ではなく“合着”と呼ばれる方法です。
簡単にいうと、セメントの力で銀歯と天然歯をくっつけているという状態です。
そのため、セメントが劣化すれば固定される力も弱くなります。
さらに銀歯に使用される歯科用セメントは水に溶けるため、長期間使用するにつれて唾液でどんどん溶かされていきます。
すると、セメントがあった部分に隙間ができてしまい、銀歯が外れたり虫歯を発症したりするリスクが高まります。
セラミックが接着する仕組みについて
セラミックは、銀歯とは違い合着ではなく接着するものです。
接着は接着剤と天然歯、セラミックの両方が化学的に結合することで、一体化に近い状態をつくりだすというものです。
つまり単純にくっついているだけでなく、セラミックと天然歯が一つの物体のようになっているということです。
また化学的な結合が生じていることから、高い固定力が得られ、一度接着されたセラミックは簡単には外れません。
さらに接着剤が隙間を埋めるため、細菌の侵入や二次虫歯のリスクも軽減できます。
セラミックの接着剤の劣化について
セラミックは劣化しにくい素材として有名ですが、治療で使用する接着剤についても、セメントに比べると強い耐性を持っています。
こちらもセラミックが外れにくかったり、隙間ができにくかったりする理由です。
ただし、一切接着剤が劣化しないのかというと、決してそういうわけではありません。
接着剤は時間の経過とともに緩やかに劣化し、少しずつ接着力が低下します。
また飲食物や歯ぎしり、噛み合わせなどの影響により、接着剤の劣化が早まるおそれもあります。
例えば普段から硬いものばかり食べている方や、就寝中に強い歯ぎしり・食いしばりをしている方は、セラミック本体だけでなく接着剤へのダメージも大きくなります。
ちなみにセラミック治療で使用する接着剤の種類によっても、劣化の速度や接着力には差があります。
セラミックの接着剤の劣化を防ぐための方法
セラミックの接着剤の劣化を極力防ぐためには、定期的な歯科検診や噛み合わせの調整、ナイトガードの使用などが大事になってきます。
歯科クリニックで定期的に検診を受けることにより、接着剤の劣化状態を確認し、早めに対処することが可能です。
もちろん、定期検診ではセラミックそのものの状態もチェックしてもらえます。
また噛み合わせが悪い方は、矯正治療などによって改善することで、接着剤への負担を軽減できます。
矯正治療は治療期間が長いですが、マウスピース矯正など比較的患者さんの負担が少ない治療方法も存在します。
ちなみに歯ぎしりや食いしばりがある方は、ナイトガードの装着も検討しなければいけません。
ナイトガードは就寝中に装着するマウスピース型の器具で、歯ぎしりや食いしばりによる負荷から歯を守ることができます。
セラミックに市販の接着剤を使用してはいけない理由
セラミック治療で使用される接着剤は、レジン系セメントと呼ばれるものです。
場合によっては、光を照射することで効果する光硬化型レジン系セメントを使用することもあります。
またセラミックと天然歯を接着させられるのは、あくまでこちらのレジン系セメントだけです。
一般的な瞬間接着剤などは、たとえセラミックががたついたり、外れたりしても使用してはいけません。
市販の接着剤には、口内で使用することを想定していない化学物質が含まれています。
これらが口内に入ると、アレルギー反応や炎症を引き起こす可能性があります。
さらに接着剤が固まるときに口内を傷つけたり、火傷をしたりする可能性もありますし、接着剤が口に残ることで異物感や不快感につながることも考えられます。
そもそも、患者さんが自力でセラミックを天然歯に接着するのは、技術的に難しいです。
自力での接着がうまくいかなかった場合、歯科クリニックでの再治療が複雑になったり、噛み合わせが悪くなったりするため、注意が必要です。
まとめ
セラミックは銀歯のように天然歯と合着されるものではなく、接着されるものです。
そのため、より固定力は上がりますし、限りなく天然歯に近い見た目を実現できています。
ただし、たとえセラミックであっても接着剤の劣化は進んでいくため、治療後は歯科クリニックでメンテナンスを受ける習慣をつけましょう。
また少しでも違和感があれば、放置せず早めに修正や再治療を受ける必要があります。