セラミック治療では、天然歯を削った部分にセラミックでできた補綴物を装着します。
こちらは当然、天然歯とは質がまったく異なるものです。
またセラミックの歯を使用するにあたっては、温度との関係性についてある程度知っておかなければいけません。
今回はこちらの点について解説します。
セラミックの歯は熱伝導率が低い
セラミックの歯は、天然歯や他の補綴物と比べて熱伝導率が低いという特徴を持っています。
こちらは食事の際、刺激を感じにくくなることにつながります。
熱伝導率は、物質が単位時間あたりにどれだけの熱量を伝えられるかを示す値です。
具体的には、ある物質の片側に1mの厚みを持たせ、もう一方の面の温度を1K上昇させるために必要な熱量と定義されます。
熱伝導率が高い物質ほど、効率良く熱を伝えることができ、逆に低い物質は熱の移動が遅くなります。
この説明だと、セラミックは優れていない素材のように聞こえますが、実際はそうではありません。
セラミックは熱伝導率が低く、熱を伝えにくいという性質があります。
そのため、食事で熱いものや冷たいものを摂取したとき、温度がダイレクトに伝わることがありません。
天然歯や他の素材の歯で熱いものや冷たいものを食べたときは、多少刺激があるものですが、セラミックはほとんど刺激を感じないようになっています。
つまり、それほど温度を気にせず食事に集中できるということです。
急激な温度変化への対応力について
セラミックは熱伝導率が低いため、食事をするとき温度をそれほど気にしなくても良いという話をしました。
しかし、こちらはあくまで熱いもの、冷たいものをそれぞれ単独で摂取する場合に言えることです。
急激な温度変化を伴う食事の場合、刺激を感じやすくなります。
セラミックは熱伝導率が低いことから、温度が伝わりにくいですが、それと同時に熱が拡散しにくいという特徴も持っています。
そのため、熱いコーヒーを飲んだ後に冷たいアイスなどを食べると、急激な温度変化に対応できず痛みが生じることがあります。
熱すぎるものは頻繁に摂取しない方が良い
セラミックは熱に強い素材であり、口に入る程度の温度であれば、基本的にはどれだけ熱くても耐えることができます。
しかし、口内を火傷しそうなほど高温の食べ物や飲み物は、セラミックの歯の劣化につながるため、頻繁には摂取しないことをおすすめします。
セラミックを天然歯の削られた部分に装着する際は、歯科用の接着剤が使用されます。
こちらは、簡単なことでは外れないように、強固に接着されています。
しかし、極端に熱いものを摂取し続けると、だんだんと接着剤が劣化していきます。
その結果、セラミックの歯の適合性が悪くなったり、最悪の場合脱落してしまったりする可能性もあります。
またセラミックが劣化し、適合性が悪くなると、歯列全体の噛み合わせにも悪影響が及びます。
セラミックはある程度の強度を持つ素材のため、噛み合わせが悪いままだと、噛み合う天然歯を傷つけてしまうことが考えられます。
ちなみに、セラミックの接着剤は歯科用のものであり、市販されている瞬間接着剤とはまったくの別物です。
そのため、一度劣化したら歯科クリニックで再治療を受ける必要があります。
セラミック治療後の知覚過敏について
セラミックは熱伝導率が低いですが、治療後に知覚過敏の症状が出てしまうと、温度による痛みを感じやすくなります。
知覚過敏の原因としては、セラミック治療中の刺激や象牙質の露出などが挙げられます。
セラミックを装着する際には、虫歯になっている部分を削る過程において、ドリルによる振動や熱で神経が一時的に過敏になることがあります。
このような過敏な反応は、セラミック治療後にも痛みとして感じられることがあります。
またセラミック治療を受けた後、歯周病や歯ぎしり・食いしばりになどにより、歯茎が下がって歯の根元にある象牙質が露出することも考えられます。
露出した象牙質は、熱いものや冷たいもの、ブラッシングなど外部からの刺激に対して敏感になります。
セラミック治療後の入浴について
セラミック治療後、お風呂に入ることは特に問題ありません。
セラミックは天然歯と同じように、40度前後のお湯くらいで変形したり、影響を受けたりすることがないからです。
ただし、治療直後は施術箇所の歯や歯茎が敏感になっている場合があります。
そのため、熱すぎるお風呂に入るのは避けるのが無難です。
また抜歯を伴うセラミック治療を行った場合、抜歯後の数日間は血行が良くなるのを防ぐため、熱いお風呂や激しい運動などを控えなければいけません。
まとめ
セラミック治療を受けようとする方は、セラミック治療の内容や治療費などについて、歯科医師に細かく相談するでしょう。
もちろんそれも大事なことですが、冒頭でも触れたように、セラミックという素材について知ることも同じくらい大事です。
セラミック治療は治療を受けることが目的ではなく、治療後セラミックの歯を問題なく使用し、生活の質を上げることが目的だという意識を持つべきです。