虫歯を治療するために歯を広く削ったときは、クラウンという補綴物を装着して歯の削られた部分を覆い、元の歯と同じ形にします。
クラウンはさまざまな素材でできたものがありますが、見た目が気になるという方にはジルコニア単体クラウンがおすすめです。
ジルコニア単体クラウンがどのようなものか、解説します。
ジルコニア単体クラウンとは？
虫歯の治療後に歯を覆うものを、補綴物といいます。
補綴物には主にインレーとクラウンがあり、削ったところが歯の上の面だけであればインレー、横も削った場合にはクラウンを装着することが多いでしょう。
一般的に、クラウンは金銀パラジウム合金でできた銀歯と呼ばれるものを装着します。
銀歯は保険が適用される素材で作られているため、治療費を安く抑えられることがメリットです。
ただし、銀歯という名前のとおり銀色をしているため、目立つことは避けられません。
奥歯の治療であれば、銀歯であっても外からあまり見えず、目立ちません。
しかし、前歯の場合は非常に目立つため、硬質レジン前装冠やCAD/CAM冠などを保険適用の治療で選べます。
白い素材でできているため銀歯ほど目立ちませんが、のっぺりとした白さであるため周囲の天然歯から浮いてしまうでしょう。
見た目が気になる場合、特におすすめするのがジルコニア単体クラウンです。
ジルコニアとは人工ダイヤモンドとも呼ばれる素材で、強度が非常に高く、歯科治療のみならずさまざまな分野で活用されています。
薬事法で歯科用ジルコニアとして認められたのは2005年のことなので、まだ20年も経過していない、比較的新しい素材です。
歯科治療で使用されるジルコニアは、酸化ジルコニアや二酸化ジルコニウムと呼ばれるものです。
セラミックの一種に分類され、世界中で年間500万本以上が使用されているという、人気のクラウンです。
審美性を重視して治療を受けたいという人にとっては、最高ランクのクラウンといえるでしょう。
ジルコニア単体クラウンは、フルジルコニアクラウンとも呼ばれます。
なぜジルコニア単体クラウンと呼ぶのかというと、ジルコニアセラミッククラウンと区別するためです。
ジルコニアセラミッククラウンとは、フレームにジルコニアを使用し、セラミックを被せたものです。
一方、ジルコニア単体クラウンは、ジルコニアだけで作製されたクラウンです。
ジルコニア単体クラウンはジルコニアだけでできているため、素材の特徴を余すことなく引き出せます。
ジルコニアセラミッククラウンとの比較
ジルコニア単体クラウンは、銀歯と比べると非常に優れた素材であり、多くのメリットがあります。
それでは、ジルコニアセラミッククラウンと比べた場合には、どちらのクラウンの方がいいのでしょうか？
結論の前に、両方のクラウンに共通するメリットを解説します。
セラミック素材でできたクラウンのメリットとして、生体親和性に優れているという点が挙げられます。
生体親和性とは、体内における違和感が少ないという意味です。
したがって、元々の組織に近い素材や互いに干渉しづらい素材などが生体親和性に優れているといえます。
セラミックは、干渉しづらいという点で生体親和性に優れた素材です。
また、金属を一切使用していないため、金属アレルギーの方でも安心して使用できます。
メタルセラミックのように、表面がセラミックで内側が金属の場合には金属アレルギー反応が出る可能性もありますが、セラミックの場合は金属を使用していないため、金属アレルギーの心配は無用です。
金属を使用していないため、歯茎の黒ずみの原因にもなりません。
なぜなら、金属の場合には経年劣化で溶けることがあるからです。
たとえば、銀歯は経年劣化で溶けだし、歯茎が黒くなることがあります。
しかし、セラミックは金属を使用していないため、上述の理由による黒ずみの問題はありません。
さらに、セラミックは経年劣化しない点も大きなメリットです。
長年の使用によって変色したり、変形したりする心配もありません。
加えて、レジンのような吸水性もないため、悪臭の原因になることもありません。
ほかに、虫歯になりにくいことも特長に挙げられます。
セラミックは表面が滑らかなので、プラークや歯石が付着することはめったにありません。
虫歯の原因となるプラークや歯石が付かず、虫歯予防になるのです。
また、歯周病も同様に予防できます。
セラミックには共通する以上のメリットを踏まえたうえで、ジルコニア単体クラウンとジルコニアセラミッククラウンのどちらがいいのでしょうか？
結論をいうと、使用する歯の場所によって異なります。
奥歯の場合は、強度の高いジルコニア単体クラウンのほうが向いています。
ジルコニアだけでできているため強度と耐久性に優れ、強い力がかかる部分に使用しても破損する心配がありません。
長く使う人であれば10年以上、中には20年以上使用している人もいるほど長く快適に使用可能です。
単体の素材でできているため、チッピングの心配もありません。
一方、前歯の場合には審美性に優れたジルコニアセラミッククラウンの方が向いています。
以上のように、ジルコニア単体クラウンとジルコニアセラミッククラウンにはそれぞれ異なる強みがあります。
そのため、前歯と奥歯で、ジルコニア単体クラウンとジルコニアセラミッククラウンを使い分けるべきなのです。
まとめ
ジルコニア単体クラウンは、透明感があり強度が非常に高いジルコニアだけで作られたクラウンです。
ジルコニアの特徴がすべて当てはまるジルコニア単体クラウンは優れていますが、ジルコニアフレームの表面にセラミックを被せたジルコニアセラミッククラウンを使用したほうがいいケースもあります。
特に、審美性はジルコニアセラミッククラウンの方が優れています。
それぞれの特長を理解したうえで、どちらのクラウンを使用するべきか歯科医師に相談しましょう。
