セラミック治療を行う際、患者さんの口内状況によっては、神経を抜く抜髄という作業を行います。
近年はセラミックの素材が薄くつくられるようになったため、抜髄の機会は減少していますが、それでも必要なケースはあります。
今回は、セラミック治療で歯の神経を抜くデメリットを中心に解説します。
セラミック治療で歯の神経を抜かなければいけないケース
以下に該当する場合、セラミック治療では抜髄を選択しなければいけません。
・歯を削る量が大きい場合
・歯髄炎が起こっている場合
例えば出っ歯や叢生などの歯並びをキレイに見せるためには、セラミックのクラウンの割合を多くしなければいけません。
しかしこのようなケースでは、天然歯を削る量が増えてしまい、神経が剥き出しになることがあります。
神経が剥き出しになると、少しの刺激で激痛が走る可能性があるため、残念ながら抜髄をしなければいけません。
また歯髄炎を引き起こしている患者さんも、セラミック治療に伴って歯の神経を抜くことになります。
歯髄炎は、歯の神経や血管が通っている組織で細菌感染が起こり、炎症を引き起こすというものです。
セラミック治療で歯を削る際、少しでも削る量や範囲を誤ると、歯髄に刺激を与えて歯髄炎を発症してしまいます。
通常治療後に歯を噛み合わせたときの痛みについては、2週間で収まることが多いですが、それ以上経っても痛みがある場合は歯髄炎の可能性が高いです。
このようなケースでは、基本的に歯の神経を抜いて対応するしかありません。
セラミック治療で歯の神経を抜くデメリット
セラミック治療では、どうしても歯の神経を抜かなければいけない場面がありますが、神経を抜くと以下のようなデメリットが生じます。
・歯が脆くなる
・根尖性歯周炎になりやすい
・歯が変色する
・二次虫歯に気付きにくい
各項目について詳しく説明します。
歯が脆くなる
セラミック治療で歯の神経を抜いた場合、以前よりも歯が脆くなってしまいます。
こちらは歯に栄養が行き届かなくなるからです。
歯髄には血管が通っていて、血管は栄養や水分を歯に供給する役割を持っています。
しかし、神経を除去した場合は栄養の供給がストップし、まるで枯れ木のように脆くスカスカの状態になってしまいます。
そのため、食いしばりが強い方やコンタクトスポーツを行う方などは、歯が割れたり折れたりするリスクが高まります。
もちろん、歯が破損すると食事が摂りづらくなったり、発音がしにくくなったりといったデメリットにもつながります。
根尖性歯周炎になりやすい
神経を失った歯は、根尖性歯周炎を発症しやすくなります。
根尖性歯周炎は、歯の中の神経が入っている根管という管の内部で細菌が繁殖し、歯根の先の部分に膿が溜まる疾患です。
神経がある場合、免疫力によって侵入してきた細菌に抵抗することができますが、抜髄をすると抵抗力は著しく失われます。
そのため細菌感染が起こりやすく、根尖性歯周炎のリスクも高まります。
また根尖性歯周炎を発症すると、歯茎の腫れや膿が出るだけでなく、咬合時の違和感や痛みにつながるおそれもあります。
歯が変色する
セラミック治療に伴い神経を除去した歯は、黒もしくは茶色に変色する可能性があります。
こちらは歯の代謝機能を失うことが原因です。
歯髄は歯の代謝機能を担っているため、これを失うと血液成分や歯の組織の変性成分が代謝されず、内側の象牙細管という組織に溜まっていきます。
溜まった物質は、時間が経つにつれて茶色~黒に変色していき、歯の見た目を悪くしてしまいます。
ちなみに、神経の除去によって変色してしまった歯は、どれだけブラッシングをしても元の色に戻すことができません。
またホワイトニングを受けても白くすることはできないため、改善したい場合は歯科クリニックで専門の治療を受ける必要があります。
二次虫歯に気付きにくい
二次虫歯に気付きにくいというのも、セラミック治療で抜髄を行うデメリットの一つです。
神経の非常に大きな役割として、痛みを伝えるということが挙げられます。
すでに神経を失った歯は、痛みを感じなくなっているため、装着したセラミックの内側で二次虫歯が起こっていてもなかなか気付けません。
また神経を失った状態でもわずかに痛みが出るという場合、虫歯はかなり重度にまで進行している状態です。
ここまで進行した虫歯は、根管治療を受けなければ治療することができず、最悪の場合抜歯をしなければいけないこともあります。
もちろん、抜歯をすると歯に関連するあらゆる行動に制限がかかります。
まとめ
必ずしもセラミック治療で歯の神経を抜かなければいけないわけではありませんが、抜かなければ治療できない場合は致し方ありません。
また歯の神経を抜くということは、歯周組織にさまざまなデメリットをもたらすことだということを、前もって認識しておきましょう。
もちろん、どうしても抜髄は避けたいというのであれば、セラミック治療以外の治療を受けることも視野に入れるべきです。